細胞・動物実験により、重粒子線に対し増感効果あるいは防護作用のある薬剤候補の探索、他の放射線に強い抵抗性を示す低酸素がんに重粒子線が有効であるメカニズムの解析、および放射線に照射された細胞以外の非照射細胞が受ける間接的影響(バイスタンダー効果等)について研究し、治療の有効性を高め、新しい治療法を開発するために必要な生物学的知見の集積を図っています。
放医研ニュース2007年4月号に掲載された紹介文はこちら。
治りゃぁいいってもんじゃぁないよ!(より安全に、より効果的に)
がんの治療に使われる放射線ってのは、体に良いのか?悪いのか? 当然、がん細胞に致死的なダメージを与えるのですから、がん細胞の立場から見てみれば体に良いものとは言えません。では、その周囲にある健康な細胞にとってはどうでしょうか。健康な細胞にとってみても、やはり体に良いものと言えないでしょう。ある程度以上の放射線が細胞に当たれば、多かれ少なかれ細胞はダメージを受け、そのダメージが大きければ細胞が死に至ります。体全体からしてみれば、がんを取り除くことによる恩恵は非常に大きなものですが、がんの周囲にいたがためにいわゆる流れ弾に当たってしまった正常細胞へのダメージもまた大きいといえます。全体の利益のためには少々の犠牲は止むを得ないということになりますが、まさに肉を切らせて骨を絶つという印象を受けます。ちょうど「薬」がそうであるのと同じです。そもそも薬とは、本来、毒と同じですから、病気に良く効く薬であっても、使い方を間違えれば人を死に至らしめることもあります。放射線がん治療の場合も同様に毒をもって毒を制すと言えるでしょう。
とはいえ、体を切らずに、痛みもなく、がんを取り除くことのできる放射線治療は、欧米ではがん治療法の第一選択肢となっています。放射線がん治療を、もっと安全に、もっと効果的に行うためにはどうすれば良いでしょうか?その答えは意外と単純です。要するに、がん細胞だけを殺すように工夫すれば良いのです。ではどうやってそれを行うか?恐らく以下の2つのやり方があります。その具体的な方法を考えるのが放射線効果修飾チームの仕事です。(つづく)
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